怪我予防 2026-09-16
ラクロスの脳震盪リスク対策|JLA公式情報から見る初期対応と部の備え
コンタクトのある局面が多いラクロスでは、頭部への衝撃と無縁ではいられません。「少し休めば大丈夫そう」「本人が続けたいと言っているから」という理由で、頭を強く打った仲間のプレーをそのまま続けさせてしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。日本ラクロス協会(JLA)は、国内リーグ戦でも脳振盪、またはそれを疑わせる症状の報告が増えているという問題意識から、公式サイトに専門ページを設けて対策を呼びかけています。この記事では、JLAの公式情報をもとに、脳振盪が疑われたときの初期対応の考え方と、部として日頃から備えておきたいリスク対策を整理します。具体的な復帰までの日数や診断基準はケースにより異なるため、この記事では全体の考え方を押さえたうえで、必ず協会公式ページで詳細を確認する流れをご案内します。
なぜ今「脳振盪のリスク対策」を知っておく必要があるのか
JLAは公式サイトの「脳振盪対策について」というページで、「近年、ラクロス競技において、国内外、男子/女子競技に関わらず、脳振盪、またはそれを疑える症状の発生が増加しており、国内リーグ戦でも複数の報告が寄せられています」と述べています。この問題意識を受けて、JLAは2019年より公式戦における脳振盪対応を全チームで統一するよう通知しており、2020年には医科学委員会を設置して安全対策部会を中心に取り組みを進めています。脳振盪は骨折や靭帯損傷のように外見からわかる怪我とは異なり、意識消失を伴わないケースも多いため、選手本人はもちろん、周囲のチームメイトやコーチが「大したことはない」と軽く判断してしまいやすい怪我でもあります。だからこそ、起きてから調べるのではなく、日頃から対応の型を知っておくことが重要になります。
脳振盪が疑われたら、その場でまずやるべきこと
「疑わしきはプレーをやめる」を大原則にする
JLAの公式ページでは、脳振盪の明らかな兆候として「競技場の地面や床の上で倒れて動かない」「見当違いをする、混乱している、質問に正しく答えられない」「バランスの喪失や歩行困難」などを挙げ、そのほかの症状として頭痛、嘔吐、めまい、「霧の中にいるような感じ」なども紹介しています。こうした様子が少しでも見られる場合は、脳振盪かどうかを自己判断せず、その場で速やかにプレーを中断させることが前提になります。「試合の大事な場面だから」「本人が大丈夫だと言っているから」という理由でプレーを続けさせることは、公式情報が最も避けるべきとしている対応です。チームメイトや審判、コーチが少しでも異変に気づいたら、遠慮せずプレーを止める判断をすることが求められます。
倒れて動かない選手には「むやみに動かさない」
強い衝撃を受けて倒れて動かない選手が出た場合、JLAは「むやみに動かさない!ヘルメットも外さない!」と強調しています。これは頸髄損傷が起きている可能性を否定できないためで、応急処置のつもりで体を動かしたり装備を外したりすることが、かえって状態を悪化させるおそれがあるからです。この場面では、慌てて動かすことよりも、まず安全を確保したうえで医療従事者の判断を待つことが優先されます。部内に応急対応の心得がある部員が一人でもいるかどうかで、いざというときの対応の質は大きく変わります。
自己判断で戻らない ― 段階的な競技復帰という考え方
JLAの公式ページでは、症状が完全に消失するまでは安静に過ごし、そのあとで少しずつ段階的に競技へ復帰していくという考え方が示されています。World Lacrosseも、選手の回復のためにRest(安静)とGraduated Return to Play(段階的競技復帰、GRTP)を組み合わせた方針を採用しており、医療スタッフの確認を経て復帰を判断するという国際的な考え方と方向性は一致しています。ポイントは、ひとつの段階を一足飛びに進めず、体調を確認しながら順番に強度を上げていく点です。症状が軽くなってきたと感じても、自己判断で練習強度を早く戻すことは避けたい行動です。復帰の具体的な日数や条件は年代やチームのメディカル体制によって異なるため、この記事ではあえて断定的な基準を示しません。実際に復帰を検討する際は、必ずJLA公式の「脳振盪対策について」ページを確認し、部にメディカルスタッフや顧問の医師がいる場合はそちらに相談することが確実な進め方です。
部として備えておきたいリスク対策
JLAの啓発活動を部内の共通認識にする
JLAは2018年に3月1日を「脳振盪啓発の日」と定め、指導者講習会やSafety Guard(安全対策担当者)講習会の開催、ガイドラインの作成・配布といった取り組みを続けています(JLA公式のお知らせ)。また、脳振盪の可能性を確認するための「CRT5(脳振盪認識ツール5)」の活用も案内されています。こうした情報は、部の中で一部の役職者だけが知っていても十分に機能しません。新入部員が入ってくるタイミングや、シーズン開始前のミーティングなどで、部全体に向けて繰り返し共有しておくことが実務的な備えになります。
部内の「脳振盪対応ルール」をあらかじめ決めておく
JLAは「チームで決めておこう!脳振盪の対応方法」という呼びかけを行っています。実際に頭部への衝撃が起きたとき、誰がプレーを止める判断をするのか、誰が救急対応にあたるのか、保護者や大学の窓口にどう連絡するのかといった役割分担を、事故が起きてから考えるのでは遅れが生じます。部内の相談先(顧問、トレーナー、大学の保健管理センターなど)をあらかじめリスト化しておくことも、いざというときに落ち着いて動ける備えになります。
男女でコンタクトの性質が異なることも押さえておく
ラクロスは男子と女子でルール上の身体接触の扱いが大きく異なる競技です。男子はボディチェックが認められたコンタクトスポーツである一方、女子は身体接触が厳しく制限されたパスワーク中心の競技であり、この違いは男子ラクロスと女子ラクロスはこんなに違うでも詳しく整理しています。接触の起き方が異なれば、頭部への衝撃が発生しやすい場面や、必要な防具の考え方も変わってきます。ヘルメットやマウスガードなど防具ごとの役割については、ラクロス防具の選び方もあわせて確認しておくと、リスク対策への理解がより具体的になります。
復帰計画は、所属リーグの日程と合わせて考える
段階的な復帰を進めるうえでは、自分が所属するリーグの試合日程も踏まえて無理のない計画を立てることが助けになります。たとえば関東男子リーグの場合、順位表やチーム一覧から各校の対戦状況を確認できるため、次の試合までにどれくらいの時間的余裕があるかを把握したうえで、練習強度を戻すタイミングを検討する材料になります。焦って段階を飛ばすよりも、体調が整ってから戻るほうが、結果的に長い目で見てプレーできる時間を確保しやすくなる場合があります。
脳振盪は見た目にわかりにくい怪我だからこそ、正しい知識を部内で共有できているかどうかで対応の質が大きく変わります。この記事で紹介した内容はあくまで全体像であり、実際の対応・復帰判断は、必ずJLA公式サイトの最新情報や、所属チームのメディカルスタッフ・医師の確認のもとで進めてください。
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