コンディショニング 2026-10-06
ラクロス部の食事・栄養管理|補食の取り方とチームでの進め方
「練習はきついのに、体重が落ちていく」「授業とバイトの合間にカップ麺で済ませてしまう」「試合当日、何をどのタイミングで食べればいいのか分からない」。大学のラクロス部に入ると、こうした食事の悩みに直面する部員は少なくないのではないでしょうか。ラクロスは、走る・ぶつかる・ひねるといった動作が続く競技です。スティックワークや戦術には熱心に取り組んでいても、食事は個人任せになりやすい面があります。
この記事では、ラクロス部員が日々の食事をどう考えればよいかを、公的機関が公開している資料をもとに整理します。特定のサプリメントや食事法をすすめるものではなく、「補食」「エネルギー不足」「チームでの取り組み方」という3つの視点から基本の考え方をまとめます。食事の必要量には体格や練習量、性別、体調による個人差があります。持病や体調に不安がある場合は、医師や管理栄養士などの専門家に相談してください。
ラクロス部員の食事で押さえたい基本の考え方
食事の基本は、主食・主菜・副菜をそろえて、1日3回きちんと食べることです。農林水産省は、厚生労働省と共同で2005年に「食事バランスガイド」を策定しています。1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかを考える際の参考として、主食・副菜・主菜・牛乳乳製品・果物の5つの区分で、望ましい組み合わせと量をコマの形のイラストで示したものです(出典: 農林水産省「食事バランスガイド」)。
このガイドは健康な食生活を目指す方向けの指針であり、競技者向けの専用の量が示されているわけではありません。ただ、「主食だけ」「主菜だけ」に偏らず、5つの区分をそろえるという見方は、部員がまず自分の食事を点検するときの土台として使いやすい考え方です。
そのうえで、スポーツをしている人には一般の人より多くのエネルギーや栄養素が必要になる場合があります。秋田県スポーツ科学センターのスポーツコラムでは、スポーツ選手は「生命を維持するためのエネルギー」「日常の生活活動のためのエネルギー」に加えて「運動をするためのエネルギー」が必要になり、1日3回の食事では足りない場合があると説明されています(出典: 秋田県スポーツ科学センター スポーツコラム 令和6年度第2号「スポーツ選手の補食」)。
つまり、ラクロス部員の食事を考えるときの出発点は、「3食をそろえる」ことと、「練習で使う分のエネルギーを足す必要があるかもしれない」と意識することの2つです。
補食とは何か|お菓子の間食とは違う考え方
上記のコラムでは、スポーツ選手にとっての「間食」は、スナック菓子やチョコレート菓子などの嗜好品ではなく、3食ではカバーしきれないエネルギーや栄養素を補うための「補食」と位置づけられています。ここでは、そのコラムが挙げている補食のタイミングと食べ物の選び方を、ラクロス部の生活場面に当てはめて整理します。
補食をとるタイミング
コラムでは、補食の活用場面として「運動前や運動中のエネルギー補給」「運動後のリカバリー」が挙げられています。昼食から練習まで時間が空く場合は、運動中のエネルギーが不足しないように運動前に補食をとること、練習時間が長い場合は水分補給とエネルギー補給を兼ねてスポーツドリンクをとることがすすめられています。
大学の部活では、授業の終わりと練習の開始時間がずれたり、午前の授業のあと夕方まで練習がなかったりする日があります。そうした日は「昼食から練習までが長く空いていないか」を一度見直してみる価値があります。
また、練習で帰宅が遅くなり夕食の時間が遅れる場合、睡眠や翌朝の朝食に影響することがあります。コラムでは、夕食1食分を練習直後と帰宅後の2回に分けて食べる「分食」が紹介されています。練習直後に補食をとり、残りを夕食でとるという考え方です。
補食に向いた食べ物
コラムによると、スポーツ選手は、エネルギーのほかにたんぱく質やカルシウムが不足しがちになるため、これらを補える食べ物を選ぶとよいとされています。整理すると次のとおりです。
- エネルギー源: 炭水化物を多く含む主食や果物。おにぎり、サンドイッチ、もち、果物、ドライフルーツなどが例として挙げられています
- たんぱく質源: 主菜に多く含まれます。ゆで卵、サラダチキン、かまぼこ、チーズ、豆乳などが例示されています
- カルシウム源: 乳製品に多く含まれます。牛乳、ヨーグルト、チーズなどで、乳製品はカルシウムに加えてたんぱく質もとれると説明されています
使い分けの目安は、練習前や練習中は主食や果物(炭水化物)を中心にエネルギーを補給し、練習後はリカバリーのために主食や果物に加えて主菜(たんぱく質)もとる、という考え方です。補食は手作りでなくても、スーパーやコンビニで買える市販品を上手に使ってよいとされています。特に暑い季節は衛生面から市販品がおすすめと書かれています。
飲み物についても、水分補給だけでなく身体づくりやコンディショニングに役立つものを選ぶ考え方が示されています。牛乳、ヨーグルトドリンク、豆乳、果汁100%ジュース、野菜ジュースなどが挙げられる一方で、砂糖のような糖分入りの飲み物は飲み過ぎに注意するよう書かれています。
試合の日は「練習のときから試す」
リーグ戦や練習試合の日は、普段と違うものを食べて体調を崩すことは避けたいところです。前述のコラムでは、試合の日にも補食を活用するとしたうえで、消化にかかる時間や試合の状況、体調、環境などを考慮し、食べ方(時間・内容・量)について、日ごろの練習時から「補食のとり方の練習」をしておくことがすすめられています。
試合当日に初めて試すのではなく、普段の練習で「このタイミングでこの量なら動きやすい」といった自分なりの感覚をつかんでおく、という考え方です。自分のチームの試合日程は、本サイトの関東男子リーグの日程のようなリーグ日程ページで確認できます。試合が続く週は、前もって補食の内容を決めておくと慌てずに済みます。
エネルギー不足のサインを見逃さない
「疲れが抜けない」「調子が上がらない」という状態を、気合いや練習不足のせいだと考えてしまうことがあるかもしれません。青森県スポーツ科学センターのコラムでは、スポーツで消費するエネルギーに対してエネルギー摂取が不足した状態が続くと、身体は生命を維持するために機能を制限し、その結果、健康やパフォーマンスに悪影響が生じる「REDs(スポーツにおける相対的エネルギー不足)」に陥る可能性があると説明されています(出典: 青森県スポーツ科学センター Column No.73(2026年1月)「REDsの危険性」)。
同コラムは、REDsの症状として、体力の低下や疲労回復の遅れ、集中力の欠如といったパフォーマンスへの影響のほか、ホルモンバランスの乱れ、骨密度の低下、免疫力の低下などの健康面のリスクが増えることを挙げています。そして「疲れやすい」「調子が上がらない」「集中できない」といった変化は単なる不調として見過ごされがちだが、REDsが背景にある場合も少なくない、と指摘しています。
同コラムが示すサインの例を、ラクロス部員向けに言い換えると次のようになります。なお、これは診断を目的としたものではなく、同コラムも気になる症状がある場合は保護者や指導者、必要に応じて医師や栄養士などの専門家に相談するよう書いています。
- 身体の状態: 朝起きても疲労感が残る、練習前から身体が重い、食欲が落ちている、集中力が続かない、冷えや貧血の症状がある
- パフォーマンス: 思い通りに身体が動かない、以前はこなせていたメニューができなくなった、記録やタイムが伸びない・低下している
- コンディション: 休んでも疲労が抜けない、同じ部位のケガを繰り返す、筋肉痛が長引く
- メンタル: やる気が出ない、些細なことでイライラする、プレーに集中できない
運営団体の日本スポーツ栄養協会のREDs解説ページも、スポーツに必要なエネルギー量に対して食事で十分にとれていない状態が背景にあること、貧血や疲労骨折、メンタル面の変化、競技パフォーマンスの低下などに表れる場合があることを説明しています。2023年の国際オリンピック委員会(IOC)のコンセンサスステートメントなどに基づく内容とされています(出典: 一般社団法人日本スポーツ栄養協会「REDsを知る・見つける・治す・予防する」)。
青森県のコラムは、予防のために食事量と運動量、休養のバランスを整えることが重要だとまとめています。サインに気づいたら、まず食事量が足りているか、無理な練習を続けていないかを見直すことが第一歩とされています。ラクロスは、試合期にはリーグ戦が続き、オフ期にも体づくりのメニューが入ります。シーズン逆算の練習計画で紹介している期分けのように練習量が変わる時期は、食事量も合わせて見直す視点が役立つはずです。体重を落とすことを目的にした極端な食事制限は、前述のとおりエネルギー不足を招く可能性があるため、避ける方向で考えるのが安全です。
一人暮らし・忙しい学生でも続けやすい工夫
ここまでの内容を、大学生の部員が日常で実行するための工夫に落とし込みます。以下は、前述の公的資料の考え方をもとに編集部が整理した例であり、効果を保証するものではありません。
- 補食を「あらかじめ持ち歩く」: 練習前にとるものを授業前に用意しておくと、昼食から練習までの空白を埋めやすくなります。コンビニで買えるおにぎりやバナナ、ヨーグルトなどでも構いません
- 練習後は「主食+主菜」を意識する: 前述のコラムが示す、練習後に主食や果物に加えて主菜もとるという考え方に沿って、おにぎりとゆで卵、サンドイッチと牛乳といった組み合わせから始められます
- 夕食が遅くなる日は分けて食べる: 夕食が遅くなる日は、分食の考え方を取り入れて練習直後に一部を食べておく方法があります
- 食事の写真を撮って振り返る: 食べたものを後から見返すと、朝食を抜いた日や主食が少ない日に気づきやすくなります。次の章で紹介するように、写真を共有してチームで確認する運用もあります
- 体調の変化をメモする: 「朝のだるさ」「練習中の集中力」などを簡単に書いておくと、エネルギー不足のサインに早く気づく手がかりになります
食事の内容は、費用の面でも無理が出やすいところです。部費や遠征費の負担については、ラクロス部の部費の相場や遠征費の考え方の記事でも整理しています。食費を削りすぎないよう、生活費全体の中で見直す視点も持っておきたいところです。
チームで栄養管理に取り組む方法
食事は個人の習慣に左右されるため、チームで取り組みにくいと感じる主将やマネージャーもいるかもしれません。参考になる事例として、公認スポーツ栄養士によるコラムでは、都内の大学バスケットボール部への栄養サポートの取り組みが紹介されています。役割分担として選手の中にも栄養管理担当を決め、朝食摂取や補食の大切さを自分たちでも呼びかけたり、それぞれの食事の写真を共有して選手同士でフィードバックする機会をつくったりしているという内容です(出典: eat-treat.jp「公認スポーツ栄養士としての私の仕事現場 ~後編~」)。これはラクロス部ではなく別競技の事例ですが、部活単位で栄養に取り組む際の運用例として参考にできます。
ラクロス部に当てはめるなら、次のような始め方が考えられます。
- 担当者を決める: 学年を問わず、栄養に関心のある部員を栄養担当にし、呼びかけ役にします
- まず現状を共有する: 朝食を食べているか、練習前に補食をとっているかを、点数化や批評をせずに共有します
- 小さな約束を1つだけ決める: 「練習後は主食と主菜をとる」など、続けやすい目標を1つに絞ります
- 専門家の力を借りる: 学内に管理栄養士や栄養学の教員がいる場合や、公認スポーツ栄養士のセミナーが利用できる場合は相談してみる方法もあります
個人の体型や体重に踏み込む指摘は、本人の負担になることがあります。チームで取り組むときは、食事量を競わせたり、体重を比べたりするのではなく、「食べやすい環境をつくる」ことを目的にするのが望ましいと考えられます。
関連するコンディショニングの記事
食事と並んで、体づくりや怪我予防も部員の大きなテーマです。体幹トレーニングメニューではグラウンド外でもできる基礎メニューを、脳震盪のリスクと対策ではコンタクトスポーツとしての安全の考え方をまとめています。また、ラクロス特有の用語が分からないときは用語集もご利用ください。
まとめ
ラクロス部員の食事は、「3食をそろえる」「練習で必要になるエネルギーを補食で足す」「不調のサインを見逃さない」の3点が基本になります。補食は、お菓子の間食とは違い、3食で足りない分を補う考え方です。練習前は主食や果物、練習後は主食に主菜を加えるという使い分けが公的機関の資料で紹介されており、試合の日の食べ方は普段の練習から試しておくことがすすめられています。
疲れが抜けない、調子が上がらないといった状態が続くときは、気合いで解決しようとせず、食事量や休養を見直し、必要に応じて指導者や専門家に相談してください。チームで取り組む場合は、栄養担当を置く、写真を共有するなど、無理のない形から始めるのがよいでしょう。
自チームの試合結果やリーグでの位置づけは、本サイトの順位表や全国8地区のチーム一覧から確認できます。
出典
- 農林水産省「食事バランスガイド」
- 秋田県スポーツ科学センター スポーツコラム 令和6年度第2号「スポーツ選手の補食」
- 青森県スポーツ科学センター Column No.73(2026年1月)「REDsの危険性」
- 一般社団法人日本スポーツ栄養協会「REDsを知る・見つける・治す・予防する」
- eat-treat.jp「公認スポーツ栄養士としての私の仕事現場 ~後編~」
本記事は上記の公開資料をもとに編集部が構成した一般的な情報です。必要なエネルギー量や栄養素は、体格・性別・練習量・体調によって異なります。持病や体調に不安がある場合は、医師や管理栄養士などの専門家に相談してください。
このチーム・この競技を応援したい方へ
ツナカレでは大学の部活・団体への協賛先を探せます。
取材してほしい部活を募集中
頑張っている部活・団体を、ツナカレ運営メディアが取材でご紹介します。
オフシーズン・引退後に、長期インターンという選択
部活で培った力を実務で試す。16タイプ診断(30秒)で合う企業がわかります。